2016年3月9日水曜日

「可愛い」と言われる野良猫の現実


野良猫を見つけたときに、たいていの人が「可愛い!」と言う。猫は、ホームレスの猫であってさえも、遠目には可愛く見える。しかし、近づいて、注意深く見ると、彼らの多くに健康上の問題があることに気づくだろう。

実に多くの野良猫に、何らかの感染症による目の疾病がある。目のきれいな野良猫のほうが稀なのだ。目は、喧嘩によって傷つきやすい箇所でもある。片目を失っていて、空洞の眼窩でカメラを見つめる野良猫の写真が手元にあるが、そのような野良猫に出会ったことは一度や二度ではない。

また、年寄りの野良猫には虫歯がありがちである。野良猫が口を閉じられなかったり、涎で下顎を濡らしているときには、歯の問題を抱えていることが考えられる。僕が路上で拾った老猫は、歯槽膿漏で顎の形が変形していたほどで、全抜歯の手術が必要だった。

毎夏、野良猫たちは蚊やノミやダニなどの吸血性の虫にたかられ苦しむ。撮影するほんの五、六分の間に、僕自身、十箇所以上蚊に刺されることも珍しくなかった。虫除けを塗っていてさえそうなのだから、彼らの苦しみは想像を絶する。猫たちは痒いところを激しく掻いて皮膚──多くは耳の裏、から血を流し、毛が抜け落ちる。そこをさらに虫は狙う。

数ヶ月、野良猫を観察してみれば、彼らの多くが下痢をしていて、それは路上で彼らが飲んでいる水が衛生的でないせいであることが理解できるはずである。撮影中に野良猫がうんちをした場合、僕はビニール袋で拾うようにしていたが、下痢となるとどうしようもなかった。

猫は自らを幸福に見せかける天才である。しかし、本当に猫が好きな人なら騙されない。野良猫は実際、無邪気に「可愛い」と言えるような状態でないことのほうが多い。しかし、多くの疾病は、獣医師にかかり、室内飼いをすることによって治療できるのである。可愛いと言った人たちの多くは、足を止めることもなく過ぎ去った。それが、野良猫たちの未来を約束する言葉だったら、どんなに素晴らしかっただろう。


2013年8月17日 東京都内にて撮影 ©Naoto Shinkai