2016年3月7日月曜日

餌やり人は愛猫家か


彼の汚れた体は、病気のために毛づくろいできないことを示している。それを、ただの腕白の徴と言う人もいる。彼のV字形に切られた耳は、NPOによる不妊手術の印である。それを、他所の猫と戦った痕と言う人もいる。

野良猫に関わるNPOの幾つかは、野良猫は罠をしかけて捕まえ、不妊手術をし、元の場所に戻すべきだと言う。TNRと呼ばれる活動である。NPOはまた、TNRを施された猫たちは近隣の住人に面倒を見てもらえるのだとも言う。

しかし、野良猫に餌を与える人が、餌を与えること以外は何もしない、としたらどうだろう。水すら与えもしないとしたら。うんちを片づけることもせず、猫が死にかけてさえ獣医師のもとへ連れて行かないとしたらどうだろう。現実には、自宅に上がろうとする野良猫を追い払う餌やり人すらいるのだ。

TNR活動には、出産制限の意味がある。しかしそれは、手術によって野良猫を幸福にする魔法ではない。耳に印を持つ猫たちは、そのことによって拾ってもらえる機会を失うかもしれない。病気になったときにも「世話をしている人がいるはず」なのだからと、放置されてしまうかもしれない。

僕はこれまで路上で、耳を切られている猫たちの惨状を数多く見てきた。餌やりをする人たちは、猫たちの病気も、怪我も見ていないようだ。むしろ、耳を切られたおかげで「気兼ねなく餌をあげられる」と言う。彼らは、義務のように餌やりを自らに課しているが、それ以外の義務が自分にあるとは考えない。時々、僕の目に彼らは、主従関係を楽しんでいるだけのように映る。飼い主と飼い猫のような、親と子の関係には見えない。

不妊手術をされ、路地に「再度」見捨てられた猫たちは、地域猫と耳当たり良く呼ばれるようになるが、彼らの厳しい現実は続く。


2013年3月5日 東京都内にて撮影 ©Naoto Shinkai

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